どう進める?親から子へ歯科医院の継承
歯科医院において、親から子へ事業の継承を考えたことはありませんか?
昨今、診療所に従事する歯科医師の平均年齢は年々上昇し、厚生労働省の調査では診療所の歯科医師平均年齢は53.1歳、中でも60歳以上の歯科医師は全体の30%にあたり、院長(親)の引退や退職を機に、その意思を子が引き継ぐ医院継承を考える方も多いと思います。
(出典:平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/18/dl/kekka-2.pdf
今回はこの「親から子への歯科医院継承」について、どのような手続きが必要なのか、個人経営の親子間での医院継承のメリットやデメリット、起こりうるトラブルなどについて見ていきましょう。
医院継承に必要な手続きとは?
単に歯科医院を親から子に事業継承するといっても、開設者や管理者が新しく変わることになりますので、第3者に継承するのと同じように手続きが必要となります。
一般的には次のようなステップを踏んで継承を完了させます。
①契約の締結
②所管の行政機関との事前協議:保健所や各種行政機関との事前協議
③廃業届及び開設届の提出
④保険医療機関指定の申請
上記にもある通り、元院長(親)が診療所の廃業届を、新院長(子)が開設届を期限内に「保健所・税務署・地方厚生(支)局等」にそれぞれ提出が必要となります。
また通常、新規開業する際は保険医療機関の承認を受けなければ保険診療は行えませんが、親子間での継承の場合、新院長(子)が「保険医療機関指定の遡及願い」に関する届け出を提出し、これが認められた場合には開設日に遡って保険診療が可能になるという制度があります。
親子間での医院継承、メリットとデメリットは?
親子間で歯科医院を継承する場合、新規開業するよりも以下の点においてメリットと言えるでしょう。
①初期費用(土地・建物・医療機器・備品等)を抑えられる
②認知度が高い
③既存の患者様を引き継げる
④スタッフを引き継げる
①初期費用(土地・建物・医療機器・備品等)を抑えられる
まず、現状の建物・設備などをそのまま継承できるという点において新規開業よりも費用を抑えることができる点がメリットの一つでしょう。但し、見えない瑕疵や負債がある場合にはそのまま引き継いだり、また施設や備品・医療機器の老朽化によって修理や買い替えが必要な場合がありますので、開業前にチェックしておきましょう。
②認知度が高い、③既存の患者様を引き継げる
その地域で評判の良い状態で引き継げば、継承する新院長はその恩恵を受けることができます。新規開業に比べて集患の労力は少なく見積もれるでしょう。しかし、古い印象や悪い評判がある場合にはそれも一緒に引き継ぐという可能性があり、新規の集患に影響します。それはデメリットといえるでしょう。また、開業した当初の親世代から時代は変化します。既存の患者様だけでは今後の経営に影響することは間違いないでしょう。現代の地域のニーズに合わせた医院を作り上げ、患者数の維持・拡大が必要となります。
④スタッフを引き継げる
基本的には歯科医院のスタッフは継続して勤務することになるため、新規雇用の募集や教育のコスト・労力が低く、その点は大きなメリットとなるでしょう。しかし、口約束のように単純に継承するのではなく、新院長と新たに雇用契約を締結する必要があります。その際には金銭的や感情的な面での労務問題が噴出するリスクを考慮しなければなりません。スタッフにきちんと説明をし、納得した上で雇用契約を結ぶのが良いでしょう。
発生しうるトラブル
先ほど、歯科医院継承をする際のメリットやデメリットをお伝えしましたが、その他にも発生するトラブルについて考えてみましょう。
親子間での価値観や診療方針の違い
親子とは言っても価値観や診療方針などの方向性が一致するとは限りません。医療機器の呼び方や治療手順、経営方針など積み重なる小さなことでもスタッフをはじめ患者様までに混乱や支障をきたす場合があります。内輪揉め等に発展するリスクを抑えることが必要です。
患者様の引継ぎ問題
患者様を新院長が引き継ぐ場合、個人情報やカルテのデータなど取り扱いは慎重に行わなければなりません。また、患者様には事前に事業継承に関する旨を説明し同意を得ることが必要です。診療方針により治療の継続ができない場合には他の医院を紹介することも必要となります。
まとめ
医院継承するにあたり医療機器の入れ替えのタイミングなど気になることが多いかと思いますが、メリットやデメリットを考え親子で早めに準備することが大切です。
少しでも気になった方は、デンタルサービスの無料相談をご利用ください。