オンライン資格確認の導入を原則義務付けへ

歯科医院はどう対応すべき?


2023年4月から健康医療機関・薬局へのオンライン資格確認の導入が原則義務付けされます。そこで、この義務付けの理由、導入にかかる費用、課題などをまとめてみます。

特に新しく歯科医院を開業する場合に、どのような意味を持つことなのかも考えてみましょう。

 

オンライン資格確認の導入が義務付けされる理由

オンライン資格確認の運用は2021年10月に始まり、すでに導入している医療機関や薬局、歯科医院などもあります。厚生労働省としては2023年3月末までにすべての機関での導入を目指していて、そのために2023年4月から導入を義務付けする方針を示しました。

では、なぜ2023年4月までに導入を推し進めるのか、その理由を見てみましょう。

理由1.事務作業を削減するため

これまでは、医療機関や歯科医院で診療を受ける際や調剤薬局で処方薬を受け取る際は、健康保険証を提示していました。

しかし、健康保険証の提示では、期限切れの保険証による過誤請求や手入力による手間など、事務方の負担も大きかったのです。それがオンライン資格確認の導入により大幅に軽減されるので、医療機関や薬局、歯科医院でのメリットも大きく、導入を義務付けることにしたのです。

 

理由2.薬剤情報や特定健診などの情報を閲覧できるようになる

マイナンバーカードを使って本人の同意を得ると、医師・薬剤師・歯科医師などは薬剤情報や特定健診の情報を閲覧できるようになります。

そうなれば、薬剤情報や特定健診などの情報を踏まえた診療・治療も可能に。過去の状況がわかることで、適切な医療行為を行えるようになります。

例を挙げてみると、特定健診で行われた血液検査や尿検査の結果を閲覧できれば、再度医療機関で検査をし直す必要もなくなるでしょう。また、歯科医院でも患者の体質に合った治療を行えるようになります。

医療行為が正しく行われるようにするためには、これらは非常に重要なことから、厚生労働省がオンライン資格確認の導入を義務付けしたのです。

 

理由3.保険資格の事前確認ができる

保険資格は、来院した時に提示された健康保険証で確認していますが、オンライン資格確認を利用すると通院中の来院予約した患者様については、事前に確認ができるようになります。

これにより、適切な対応をすることができるようになるでしょう。

 

理由4.患者が簡単に限度額情報を取得できる

医療費が高額になった場合は、限度額以上は支払わなくていいのですが、そのための申請方法がこれまでは面倒でした。

オンライン資格確認の導入が行われると、申請がなくても限度額情報の取得ができるようになり、患者は窓口で限度額以上の医療費を支払う必要がなくなります。

歯科医院の治療では医療費が高額になることがあり、患者も医療費の限度額を知りたくなりますが、その情報がすぐに取得でき、必要以上の支払いをしないで済めば、とても助かるでしょう。

 

オンライン資格確認の導入方法と費用

すでにオンライン資格確認を導入している医療機関や薬局、歯科医院もありますが、まだ数は少ないです。大半の機関はこれからとなるでしょうから、導入方法や導入にかかる費用を紹介します。

オンライン資格確認の導入方法

オンライン資格確認を導入するための手続きの流れを見ておきましょう。

1. 「医療機関等向けポータルサイト」でアカウント登録
2. 顔認証付きカードリーダーを選んで申し込みをする
3. システムベンダーに見積もりをしてもらって、発注
4. ポータルサイトでオンライン資格確認の利用申請をする
5. 機器を受け取り、設定をする(システムベンダーにて設定)
6. システムベンダーにてテストをする
7. ポータルサイトで運用開始日を登録
8. 受付業務の変更点などを確認する
9. 患者向け周知物を準備・掲示
10. 窓口でオンライン資格確認を開始する

オンライン資格確認導入対応業者の問い合わせ先は以下で確認してください。
PDFファイル(3/11).pdf

オンライン資格確認に係る導入支援サービス提供業者については以下を参照してください。
PDFファイル(3/11).pdf

オンライン資格確認を導入する費用

オンライン資格確認の導入費用は、各医療機関・薬局・歯科医院のシステム導入状況、ネットワーク環境、ネットワークベンダーが設定している料金体系などによって変わるので、一概にこうだとは言えません。

ただ、おおよその目安は示すことができます。

 

▼費用目安

項目 費用目安
資格確認端末関係 14.1~23.8万円
ネットワーク設定作業など 3.7~13.4万円
院内ネットワーク関連機器 1.1~8.3万円
レセコン等の既存システムの改修に係るパッケージソフトの購入及び導入 8.9~24.7万円

参照元:「オンライン資格確認等システムの導入費用に係る留意点」より

オンライン資格確認の導入にあたって利用できる補助金制度もあります。まず、顔認証付きカードリーダーは、病院では3台まで無償提供になり、薬局・診療所では1台が無償提供です。

その他の補助金については表にまとめてみましょう。

 

▼オンライン資格確認の導入における補助金

病院 病院 病院 大型チェーン薬局 診療所/薬局(大型チェーン薬局以外)
1台導入の場合 2台導入の場合 3台導入の場合
105万円を上限に補助
※事業額の210.1万円を上限にその1/2を補助
100.1万円を上限に補助
※事業額の200.2万円を上限にその1/2を補助
95.1万円を上限に補助
※事業額の190.3万円を上限にその1/2を補助
21.4万円を上限に補助
※事業額の42.9万円を上限にその1/2を補助
32.1万円を上限に補助
※事業額の42.9万円を上限にその3/4を補助

参照元:「オンライン資格確認の導入で事務コストの削減とより良い医療の提供を~データヘルスの基盤として~」より
※2023年3月末までに補助対象事業を完了させ、2023年6月末までに補助金交付申請をすることが条件です

これから歯科医院の開設を考えている人の場合、右側の診療所の補助金が対象になります。

 

オンライン資格確認の導入義務付けにおける課題

オンライン資格確認導入義務付けに伴う課題も浮き彫りになっています。どのような課題か確認してみましょう。

まだ導入が進んでいない

2022年1月27日、第150回社会保障審議会医療保険部会の発表した資料によると、顔認証付きカードリーダー申込施設数は全体の56.7%になっていますが、準備完了施設は15.7%、運用開始施設は10.9%にとどまっています。

2023年4月のオンライン資格確認導入義務付けまで期間はあまりありませんが、いかに加速させていくかが今後の課題です。

 

初期費用が補助金の上限額を超える場合がある

オンライン資格確認導入の初期費用が補助金の上限額を超える場合があります。これは小さな診療所や歯科医院などにとっては大きな負担になりやすく、導入を進めにくい状況にもなっています。

新たに歯科医院を開設する者にとっても気になる問題です。

 

ランニングコストがかかる

オンライン資格確認の導入では、初期費用とともにランニングコストもかかります。事務作業が簡素化される点は医療機関や薬局、歯科医院にとってもありがたい点ですが、その分ランニングコストも手作業よりも高くつきます。

義務付けされたら、ランニングコストがかかっても導入しないわけにはいきませんが、各医院の負担を軽減させるにはどうすればいいか、これも課題です。

 

セキュリティ対策が不安

オンライン資格確認では、外部ネットワークとの接続を前提にしたシステム運用が行われます。そのため、サイバー攻撃などのセキュリティ上のリスクを抱えることになります。情報漏洩の心配もあるでしょう。

それだけに、各医療機関や薬局、歯科医院のセキュリティ対策をどのようにサポートしていくかが今後の課題です。

まとめ

2023年4月までに導入が義務付けされたオンライン資格確認の導入。導入すれば、医療機関や薬局、歯科医院だけではなく、患者様にもメリットがあります。

それだけに厚生労働省も義務付けという方針を打ち出したのですが、導入にあたっては課題も浮き彫りになりました。今後はその課題をどう解決していくかが焦点になってくるでしょう。

これから歯科医院を開設する人はオンライン資格確認を必ず導入することになるので、課題や問題点を確認しながら、スムーズに導入を進めていただければと思います。

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